「リメンバー・ミー」と「さよならの朝に約束の花をかざろう」の家族像

半年以上前から公開を楽しみにしていた「リメンバー・ミー」を観てきた。
ボーイミーツロックな成長物語だと思ったら、家族愛がテーマの物語だった。
これは完全に好みの問題だけど、家族愛を賛美する作品が苦手なので、モヤモヤするシーンも多かった。音楽をきっかけに何世代にも渡る確執があった家族が、どんな誤解があったにせよ、「家族だから最後は分かり合える」という展開になったのには納得がいかない。それまで築いてきた価値観やプライドもあるだろうし、人間の感情はそこまで単純じゃないだろう。
あと、この作品における悪役って「先祖を殺した人」ではなく「おばあさん」だったんじゃないか。おばあさんの言動には正直イライラしたけど、逆に言えば、なぜあそこまで悪く描いたんだろう。そこには典型的な、「夢を追い続ける男とそれに理解が無い女」「家族よりも夢を選んだ男と家族のために家に入った女」という関係性が見えてくる。

思い返せば、この前観た「さよならの朝に約束の花をかざろう」も家族愛(母の愛)がテーマだった。
女性キャラは総じて聖母マリアの如く母性の塊みたいな人たちだった。終盤の畳み掛けるシーンを観ていると、「母親の愛が最も純粋で美しく、女は生まれながらに母性を持っている。人が生きる意味は大切な人と結ばれて子孫を残すこと。」といわれているみたいで若干怖かった。(こう書くとディスってるみたいだけど、ここ1年間で観た映画の中で1番好きだった)
マキアがラングを振ってエリアルを選ぶシーンがあるけど、あそこは子離れ親離れという意味でもラングを選んで欲しかった。もしくはエリアルとの関係性を母と息子に限定しなくても良かったんじゃないかと思う。
あと、レイリアとクリムの会話がまさに「子供が最優先の妻とそれを理解しない夫」を連想させた。

2作品とも古き良き家制度を賛賞しているようにも、問題提起をしたいようにも取れる。

以前、山田玲司さんの映画論で、アナ雪では「他人を気にせずひとりで生きていくこと」を描ききったので、それ以降は「誰かと一緒に生きること」をテーマにした作品が必要とされてくる、というようなことを言ってた。まさにその流れに沿った2作品なのかもしれない。

最後に。
作品に文句付けた感じになってしまったけど、2つともちゃんと面白かった。
リメンバー・ミー」は野良犬ダンテの存在意味を考えると楽しいし、ワンちゃんネコちゃんにはグッと来た。「さよならの朝に花束をおくろう」は戦闘や飛行シーンが爽快だった。そしてクリムが好きだ。



余談だけど、最近の映画の共通点と言えば、「リメンバー・ミー」「KUBO」「鎌倉ものがたり」はいずれも死後の世界を描いているし、「さよならの朝に花束をおくろう」「今夜、ロマンス劇場で」は歳を取らないヒロインが出てくるし、「KUBO」「さよならの朝に花束をおくろう」は糸がキーワードになっている。いずれも「体は死んでもあとに残るものがある」ということを伝えたいのかなと思った。そう考えると、2016年にヒットした邦画「シン・ゴジラ」「君の名は。」「この世界の片隅に」に共通する「震災をどのように受け止めるか」という流れから続いているテーマなのかもしれない。(リメンバーミーは日本に関係ないけど、そこは目をつぶって)